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    [日系企業]  ベトナムからの事業撤退における留意点

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    2014年10月14日
     ベトナムに進出する日系企業数、投資額が増えている一方で、ベトナムに設置した拠点を閉鎖する日系企業も増えている。
     拠点の閉鎖といっても、新たな形態での拠点を設置するために現拠点を閉鎖するケースがある。最近よくあるのは、駐在員事務所を閉鎖して法人を設立するケースである。この場合は事業撤退ではなくて、むしろ「更なる進出」とでも言いましょうか。しかし今回は、そのような形での拠点の閉鎖ではなくて、ベトナムからの完全撤退、特に法人を閉鎖して撤退する際の法律上および税務上の問題点に焦点を当てて、主に注意すべき点をピックアップして説明する。

    (1)法的代表者の責任
     撤退・清算する会社の債務完済責任が法的代表者に対して一番重いことは日本と変わらない。現在のベトナム法において、会社はすべての債務を完済しなければ税務調査を受けられない等、清算手続きが結了しないことになっている。特に外国法人は債務上のトラブルがあった場合、その法的代表者は撤退手続き中の入出国において不自由することがあり得る。具体的には、裁判所への出頭命令や債権者との話し合いにかなり時間を取られることがあることに留意が必要だ。場合によっては空港の入出国手続きで拒否されることがあり得る。
     特に会社の清算手続きは、ベトナムの場合、非常に時間がかかるのが実情だ。場合によっては2年、3年かかることもある。この主な要因は、会社清算のために債務の完済が必要である点と、税務調査を申請しても現実は税務署調査員がなかなか来てくれない点である。前者に関しては、清算するに至った主な原因として、事業が想定通りいかなかった一方で、清算結了のために債務を完済することが必須という、ある意味法律上の矛盾(?)である。後者に関しては、税務調査員に制度はともかく、お金を取れないところで真面目に税務調査に取り組むインセンティブがない、ということであろうか。いずれにしても申請後にさっと来てくれるケースは筆者の知る限り事例がない。
     従って、お金がないので頑張って親会社がベトナムの債務を完済しても、税務調査が終わらずに清算結了に足らない日系企業は時々見受けられる。ベトナムで事業をたたむ外国企業で、清算手続きなどを行わずそのまま放置する、いわゆる“夜逃げ”のような会社が多数存在するのはこのためである。

    (2)税務会計上の留意点
     先述の清算手続きが中々結了しないことの弊害は、税務会計上の問題点としても現れる。例えば、日本本社から投資したベトナム子会社の清算が結了しなければ、日本本社の法人税法上、当該子会社への投資(出資や貸付金)の評価損がいつまでたっても損金算入できないことがあり得る。日本本社としては、とっくに事業を停止して会計上評価損を計上しているのに、税務上いつになったら損金経理できるのか分からず、タックスプランニングが難しくなる。
     上記とは別に、外国人投資家の場合、ビジネスライセンスが取得できないためベトナム人の名義を借りて事業を営むケースがしばしばある(以下、「ノミニーケース」)。日本企業の場合、飲食店(レストラン)が典型的である。
     ノミニーケースはベトナム人名義の会社で事業を営むが、その運営上の資金は当該会社の所有主であるベトナム人ノミニーに対して、資本金相当額の貸付金として渡すことになる。あるいは、この金額を当該会社の口座に直接払い込むケースもある。しかし、いずれにも法的な意味での資本拠出があったとして出資者(所有主)になることはない。当該会社の所有主として営業許可証に記載されるのはノミニーの名前だけである。
     従って、当該払込資本の性質に関しては、会社の所有権が法的に担保されたものでなく、撤退あるいは当該実質持分の第三者への売却に当たっては本質的に留意すべきであるが、それに関連して別途税務会計上の問題が存在する。つまり、後日、当該資本の評価損や売却損を計上する場合、資本としての根拠がないので税務上の損金として認められない可能性がある。
     税務上、といっても日本の税務とベトナムの税務とで取り扱いが異なると考えられる。また、そもそもノミニーケースは正規の法的手続きに沿ったスキームではないため、ノミニーケースの税務上の取り扱いを定めた規定が存在しないであろう。ノミニー出資が日本法人からの場合は日本の税務の問題となり、ノミニー出資がベトナム法人からの出資の場合はベトナムの税務の問題となる。

    以下、その他の留意事項を記載する。

    (3)債務整理の優先順位:
    ・就業規則及び労働協約に定められた給料、休職手当や社会保険など労働者の権利に関する債務
    ・税金債務
    ・すべての債務と清算費用を精算した後の残余財産を企業の所有主が保有する

    (4)労働契約の解除と退職手当
     多くの従業員との契約を解除する際には労働組合と打ち合わせをするとともに、企業清算決定を出す30日前に省級労働管理局に通知しなければならない。
    失業保険に加入している企業は、12か月以上就業した労働者に退職手当を支払う義務を負わない。この退職手当は失業保険基金から支払われる。

    (5)清算決定からの主な禁止事項
     ・財産の隠匿または分散
     ・債権の放棄または減免
     ・無担保債務から企業財産による担保付債務への変更
     ・企業解散を行うための契約以外の新規契約の締結
     ・財産の質入、抵当、贈与、賃貸
    ニュース提供元:エスネットワークス・ベトナム http://www.esnet.com.vn

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